
「AIにブログを書かせているのに、アクセスも問い合わせも増えない」——こうした相談が増えています。原因は単純です。正しいことを並べただけの“誰の言葉でもない記事”が量産され、インターネット上ではデジタルのゴミと化しているからです。本記事では、現役社長の視点から「なぜAI記事がゴミになるのか」を解き、具体的な手順でAIを“有能な編集者”に変える方法を解説します。現場の泥にまみれたあなたの経験を唯一無二の資産に変えましょう。
イントロダクション:3秒でブラウザを閉じられる記事の正体
ある社長が自社ブログを見せてくれました。断熱リフォームのメリット、失敗しない業者の選び方、といった教科書どおりの項目が並んでいます。内容は間違っていない。でも、読み始めて3秒でブラウザを閉じたくなる。その理由はシンプルです。記事に「誰が書いたのか」「現場で何を見て何を感じたのか」が全く見えないからです。
読み始めて3秒でブラウザを閉じましたよ
こうした「正しいが無味乾燥な記事」は大量生産され、検索エンジンにもユーザーにも評価されません。AIは魔法ではありません。入力(あなたの素材)次第で結果が決まります。ここからは、そのメカニズムと対処法を順を追って説明します。
まず理解すべきこと:生成AIの正体(AIは“平均値を作る機械”である)
ChatGPTなどの生成AIは、ウェブ上の膨大なテキストを学習し、与えられた問いに対して「最も確率の高い」続きを出力します。つまり、何も工夫せずに「断熱について書いて」と命じれば、世の中にある平均的で無難な断熱記事が出来上がるだけです。
- AIは「独自体験」を発明しない。学習データにあるパターンを再構成する。
- 出力は「無難な平均値」。目を引く個性や現場の血肉は入らない。
- Googleなど検索エンジンは、オリジナリティのないコピーコンテンツを低評価にする。
結果、AIに丸投げした瞬間、あなたのコンテンツは「その他大勢」の海に沈んでしまう——これが最初の罠です。
致命的なワナ:二次情報の罠と一次情報の価値
多くの人がやってしまう失敗は「ネット上の情報をAIにまとめさせる」こと。これを私たちは「二次情報の罠」と呼びます。二次情報だけで構成された記事は、既にどこかで読める内容でしかありません。生き残る記事には必ず一次情報(あなた固有の経験や現場の記録)が含まれています。
比較してみましょう。
- 二次情報の例:グラスウールの熱伝導率は0.038 W/mKである。
- 一次情報の例:昨日、解体現場で壁を剥がしたら湿気で真っ黒になったグラスウールが出てきた。私は思わず息を止めた。
後者は現場のリアルが伝わり、著者(社長)の感情が滲み出ます。AIの学習データにはこの“個別体験”は存在しないため、ここにこそ唯一無二の価値が生まれます。
本質:AIには「入力(素材)」を与えるのが仕事
重要なのは、AIにネット情報を与えるのではなく、あなたの脳内にある一次情報(現場で見たこと、感じたこと、怒りや喜び)を与えることです。AIはその素材を増幅し、美しく整える有能な編集者になります。しかし編集者はネタを生み出せません。ネタ(岩)を掘り出すのは現場にいるあなた自身です。
プロンプト(指示)の違いが結果を決める:失敗例と成功例
ここで具体的に見ていきます。よくある失敗プロンプトと、資産記事を生む成功プロンプトの違いです。
失敗するプロンプト(典型例)
「耐震等級3の重要性を解説して」とだけ指示するケース。こうするとAIは建築基準法の数値、地震保険が安くなるといった一般論を並べるだけで、読み手の心には響きません。Wikipediaで十分な内容です。
成功するプロンプト(価値倉式)
次のように指示します——「耐震等級3を取らずに家を建てようとしたお客様を私が『そんな家ならうちは建てません』と本気で叱ったエピソードを元に、当時の私の怒りやお客様の反応、図面を叩きつけた時の情景メモを渡すので、記事を書いてください」。このとき渡すのは単なる事実ではなく、感情や反応のメモです。
なぜこれが有効か。読者はストーリーに引き込まれます。「なぜ社長はそこまで怒ったのか?」という問いが生まれ、記事を読み進める動機になります。プロとしての覚悟や信念が伝われば、読者は「この社長は本気だ」と信頼します。これが広告や短期施策ではなく、長期的な資産記事になる理由です。
GIGOの法則はAIライティングにも適用される
コンピューターの世界には「GIGO(Garbage In, Garbage Out)」という言葉があります。ゴミを入れたらゴミしか出てこない。AIも同じです。薄っぺらい材料(薄いプロンプト)を与えれば薄っぺらい記事が出来上がる。逆に濃厚な体験談を与えれば、感動的で人の心に残る記事が生まれます。
AIはあなたの拙い言葉という“岩石”を美しく磨く編集者。だが岩石を掘り出すのは現場のあなたしかいません。毎日現場で働き、お客様と向き合う社長が持つ感情こそがコンテンツの原石です。
実践ステップ:現場の体験を「資産記事」に変えるワークフロー
ここからは現場の体験を具体的に記事へ落とす実践手順。社長が忙しくても実行できるよう、短時間で使えるフォーマットを示します。
-
現場ノートを習慣化する(所要時間:3分/現場)
現場でスマホに残す項目:日時、場所、誰と、何を見たか(物理的な状態)、あなたの第一印象(感情)、お客様の一言。短くても構いません。重要なのは「感情」を必ず記録すること。
-
一次情報を3つ選ぶ(所要時間:10分)
週に1回、現場ノートから「これは伝えたい」と思うエピソードを3つ選びます。理屈ではなく読ませる“情景”があるものを選ぶこと。
-
フレーム化してAIに渡す(所要時間:15分)
選んだエピソードを以下のテンプレートに当てはめてメモを作成します。テンプレは簡単です。
- タイトル(あなたが感じた一言)
- 舞台(現場の状況)
- 出来事(何が起きたか)
- あなたの反応(感情・行動)
- 結果と学び(お客様の反応、施工の教訓)
-
AIに「編集してくれ」と指示する(所要時間:10分)
ここで先の成功プロンプトを使います。事実だけではなく「怒り、驚き、悲しみ」など感情を具体的に書き込んだメモをAIに渡し、「読み物形式で、社長の語り口で、読者の心を動かすように500〜1,000字でまとめて」と指示してください。
-
人の目で必ず推敲する(所要時間:5〜15分)
AIが作った原稿はテンプレ化された「素晴らしい下書き」です。社長の声に違和感がないか、事実に誤りがないかをチェックして最終公開します。ここであなたの顔が見える文言(例えば「私が図面を叩きつけた」など)を残すか削るか判断します。
プロンプトの具体例(使えるテンプレート付き)
以下は即使えるプロンプトのテンプレートです。各項目にあなたの一次情報を埋めてAIに投げてください。
テンプレートA:現場エピソードを物語化する
以下をAIに与える:
・タイトル(例:壁の中から出てきた黒いグラスウールを見て…)
・舞台:○年○月、◎市、解体現場、築○年の住宅
・出来事:壁を剥がしたら湿気で黒ずんだグラスウールが出てきた
・社長の反応:息が止まり、思わず手が止まった。怒りと悲しみが混ざった
・お客様の反応:驚き、心配そうに私を見た
・学び:断熱の重要性をお客様にどう伝えるべきかが明確になった
・要望:社長の語り口で、読者が感情移入できる800〜1200字の読み物にしてほしい
これをAIに与えれば、一次情報を軸にした“温度感のある記事”が生成されます。出力後は必ずあなたの言葉で微調整してください。
テンプレートB:議論を引き出す「社長の断言」記事
「うちはこう考える」という覚悟を示す記事向けテンプレです。
・タイトル(例:家族の命を守る家づくりに妥協はしない)
・舞台:営業で遭遇したお客様のエピソード(予算を理由に耐震等級を下げたいと言われた)
・社長の台詞:『そんな家ならうちは建てません』
・出来事:図面を叩きつけ、理由を説明した一連のやり取り
・お客様の反応:最初は困惑、やがて理解し契約につながった
・学び:施工者が「命を守る」という立場を明確にする価値
・要望:プロとしての信念が伝わる1200〜1500字の記事に
こうした記事は単なる情報提供ではなく、ブランドの“信念”を構築します。
チェックリスト:資産記事にするための必須要素
記事を公開する前に、以下のチェック項目を確認してください。これらはSEOだけでなく「読まれるか」「信頼を勝ち取れるか」に直結します。
- 一次情報が含まれている(現場の情景、具体的な数値よりも情景+感情)
- 社長の声が分かる一文がある(断言・台詞・行動など)
- 読者の疑問に先回りして答える構成になっている
- オリジナル写真や図が入っている(可能なら)
- タイトルに引力がある(数字・問題提起・感情)
- Meta description用に70〜120字の要約を用意している
- 内部リンクで関連する既存記事に誘導している
よくある反論とその答え
「現場ノートを書く時間がない」「恥ずかしい話を公開できない」などの声に対する現実的な解決策を示します。
反論1:現場ノートを書く時間がない
解決策:1件あたり3分で良い。スマホのメモに以下を残すだけで十分。
- 日付・場所
- 一言の情景(例:「グラスウールが黒ずんでいた」)
- あなたの感情(例:「息が止まった」)
反論2:個人情報や顧客の顔が出るのが怖い
解決策:仮名や一般化で問題なし。重要なのは感情と行動。匿名化しても一次情報の価値は低下しません。
反論3:ネガティブな体験は会社の評判を落とすのでは?
解決策:失敗や問題を隠すより、どう対応したかを示す方が信頼を生みます。「問題→対応→学び」をシンプルに示すことが信頼構築の王道です。
SEO観点の補足:検索で勝つために必要なこと
AIで作った記事をただ並べるだけではSEOで勝てません。次のポイントを押さえましょう。
- E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)を意識する。一次情報と社長の顔(プロフィール・写真)を明示する。
- タイトルと見出しに読者の検索意図(悩み)を入れる。「〜する方法」より「〜したらこうなった」の方が差別化しやすい。
- 内部リンクでトピッククラスターを構築する(地域×サービスで横展開)。
- 画像や現場写真にaltを入れ、記事と画像の関連性を強化する。
- 頻繁に更新せずとも「質の高い一次情報」が積み上がれば資産化する。
ケーススタディ:一次情報で生まれた資産記事の構造
ここでは、動画内で紹介した二つの小さな実例を元に、どのように記事が組み立てられるかを示します。
事例A:解体現場のグラスウール(一次情報)
- 導入:現場の情景描写(黒くなった断熱材、におい、湿り気)
- 問題提起:このまま放置すれば断熱性能は下がり、健康被害も起きかねない
- 社長の行動:その場で写真を撮り、お客様に現状を見せて説明した
- 解説:グラスウールの劣化原因、予防法、施工時の注意点(専門家の視点)
- 結論とCTA:あなたの家もチェックします。無料点検の案内(地域限定)
こうした構成は一次情報が先頭にあるため、読者の関心を即時に引き、最後まで読ませる力を持ちます。
事例B:耐震等級でお客様を叱った話(ブランド形成)
- 導入:営業の場面描写(予算優先の提案)
- 感情の露出:社長が図面を叩きつけて語った一言
- 議論の展開:耐震等級3の意味、命を守る設計とは何か
- 信頼構築:結果的に顧客が理解し契約に至ったエピソード
- CTA:あなたのリスク診断をします/無料相談へ誘導
このタイプの記事は、その社長の信念を伝え、競合との差別化を生みます。単なる説明文ではない「ブランドの物語」です。
テンプレートを超えて:編集者としてのAIを活かすコツ
AIを単なる記事生成ツールとして使うのではなく「編集者」として使い倒すためのコツを列挙します。
- 複数案を出させる:一度で決めず、AIに3パターンの導入・結論を作らせ、良いところを手作業で組み合わせる。
- 声のトーンを明示する:「職人気質の厳しさ」「親身な相談相手」など、トーンを指定して生成する。
- 社長語録を作る:よく使うフレーズや断言(例:「命を守る家づくり」)を保存し、継続的に記事に差し込む。
- 過去記事との紐付け:一次情報が増えたら、既存記事に追記・更新して資産性を高める。
公開後の運用:長期的な資産化を目指す運用ルール
記事を公開したら終わりではありません。資産化させるための運用ルールを設定しましょう。
- 公開から90日間は週次で流入を観察し、タイトル・スニペットを改善する。
- 半年に一度、一次情報が増えたら記事に追記し「最終更新日」を更新する。
- 成功記事は音声・動画コンテンツに拡張して繰り返し活用する。
- 地域キーワードと結びつけ、ローカル検索での支配力を高める。
まとめ:AIは道具、あなたの経験が資本である
要点をまとめます。
- AIは平均値を作る機械。オリジナリティはあなたの一次情報でしか生まれない。
- 二次情報だけのまとめ記事は価値が低い。現場の情景と感情(一次情報)を必ず入れる。
- プロンプトの質が出力を決める。具体的な情景・感情メモを渡すこと。
- AIは有能な編集者。ネタを掘るのは現場にいる社長だけ。
- 資産化には発信の継続と運用が必要。記事を音声・動画・書籍へと拡張する戦略が有効。
今回の話は建築業の社長に向けたものですが、本質はどの業界にも共通します。AIが得意なのは「編集」と「拡張」です。あなたの現場での“痛み”、”怒り”、”誇り”をAIに渡し、読み手の心を動かすコンテンツに仕立てましょう。これこそが、検索に強く、長期で効く「資産記事」を作る唯一の方法です。
よくある質問(FAQ)
一次情報って具体的にどれくらいの量を書けばいいですか?
量より質です。短くても良いので「いつ・どこで・誰が・何を見て・どう感じたか」という情景と感情を含めてください。スマホメモで3〜5行、あるいは音声メモで30秒もあれば十分です。
顧客や現場のネガティブな話は公開しても大丈夫ですか?
顧客の個人情報は匿名化すれば問題ありません。重要なのは問題発生後にどう対応したか、その学びを示すことです。対応の誠実さがブランドの信頼につながります。
AIに任せきりでOKな部分とダメな部分は?
OK:原稿の整形、導入文や結論の推敲、複数案の生成。ダメ:オリジナルの一次情報生成、最終的な事実確認や社長の“声”の最終チェック。必ず人の目で確認してください。
テンプレートを使えば担当者でも記事が作れるようになりますか?
なります。テンプレートに一次情報を埋め、AIに渡すだけで“社長の声”を再現した下書きが作れます。最終チェックだけは社長自身が行うか、社長の声を理解している担当者が行ってください。
一次情報が少ない場合はどうすればいいですか?
過去の契約事例や施工の失敗談、顧客からの感謝の声など、既にある素材から一次情報を掘り起こしてください。インタビュー形式で現場スタッフに聞くのも有効です。
最後に:小さな習慣が会社の未来を変える
毎日の現場ノート、週1回の一次情報ピックアップ、AIへの具体的なプロンプト——この3つを継続するだけで、あなたの情報発信は変わります。AIは道具。あなたの経験と覚悟があって初めて、情報発信は“資産”になります。今日から現場で見た一つの情景をメモしてください。それが明日の資産記事の始まりです。

