建築業界で長年戦ってきた中小建築会社の社長にとって、自社の「技術力」は誇りであり、最大の武器です。しかし、ただ技術力が高いだけではお客様に選ばれない――そんな厳しい現実に直面している経営者は多いのではないでしょうか。現代の「技術力神話」が崩壊した今、技術と集客の新たな関係を築かなければ勝ち残れません。
本記事では、YouTubeチャンネル「カチクラ電波 中小建築社長のための360°マーケ塾」の人気シリーズから、稲葉高志氏が20年以上の経験をもとに語る「技術を受注に繋がる価値へ転換する思考法」を深掘りします。経営者が自社の技術をどのように顧客に伝え、選ばれる会社へと変革していくべきか、その具体的な戦略と実践ステップを詳しく解説。技術力を最大限に活かし、独自の市場を創り出すためのヒントが満載です。
目次
- 目次
- 技術力だけでは選ばれない時代の現実
- 技術は「武器」、集客は「照準器」─両者の関係性とは
- 顧客が本当に知りたいことを伝える価値転換の重要性
- よくある情報発信の落とし穴とその原因
- 技術を最強の集客資産にするための3つの戦略ステップ
- 最後の鍵は「信頼」と「ファンづくり」
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
目次
- 技術力だけでは選ばれない時代の現実
- 技術は「武器」、集客は「照準器」─両者の関係性とは
- 顧客が本当に知りたいことを伝える価値転換の重要性
- よくある情報発信の落とし穴とその原因
- 技術を最強の集客資産にするための3つの戦略ステップ
- 最後の鍵は「信頼」と「ファンづくり」
- よくある質問(FAQ)
技術力だけでは選ばれない時代の現実
前回の放送で稲葉高志氏は、多くの建築会社が抱える「技術力神話の崩壊」という厳しい現実について語りました。かつては高い技術力があれば自然とお客様に選ばれ、注文を獲得できる時代がありました。しかし、現代ではそう単純ではありません。
その理由は主に3つあります。
- 良いもののコモディティ化
例えば、断熱材や塗料、工法などの技術が広く普及し、どの会社でも同様のスペックを提供できるようになったため、技術の差別化が難しくなっています。 - 顧客ニーズとのズレ
技術がいくら優れていても、顧客の本当の悩みやニーズと合致していない場合、選ばれません。 - 言葉不足による伝達の失敗
技術の凄さを一方的に語るだけで、お客様が知りたい「自分の未来がどう変わるか」という価値に結びつけて伝えられていないのです。
これらの課題を明確に理解した上で、次に大切なのは「技術力をどのように価値に転換し、受注に繋げるか」という思考の変革です。
技術は「武器」、集客は「照準器」─両者の関係性とは
稲葉氏は自身の20年以上の業界経験から、「最高の武器である技術や商品も、それを使うための照準器がなければ、ただの鉄の塊に過ぎない」という結論に至りました。
ここでいう「武器」とは、建築会社が持つ技術力や商品そのもの。そして「照準器」とは、マーケットの変化や顧客ニーズを的確に捉え、技術の力を最大限に発揮させるための集客戦略や情報発信のことです。
例えば、稲葉氏が2003年に始めた接種支給ビジネスは、当時画期的な仕組みで商品自体は間違いなく良いものでした。これが「武器」に当たります。しかし、市場の変化(的の動き)を正確に読む「照準器」が甘かったため、良い武器を持っていても的を外してしまい、結果的に成功には繋がりませんでした。
つまり、どんなに良い技術や商品があっても、それを求めるお客様に的確に届けなければ意味がないのです。
顧客が本当に知りたいことを伝える価値転換の重要性
多くの建築会社は、最新の工法や技術のスペックを語ることに終始してしまいがちです。例えば、断熱材の性能や耐久性の高い塗料の技術説明など。しかし、お客様が本当に知りたいのは「その技術によって自分の生活や未来がどう変わるのか?」という点です。
例えば、高性能な断熱材の技術を語るのではなく、それによって「冬でも裸足で過ごせるリビングの心地よさ」や「将来の光熱費の不安から解放される安心感」といった価値を伝えることが重要です。
また、高耐久な外壁塗料の技術を語るのではなく、「次の20年間、家の美観と資産価値を守り続ける経済的メリット」を伝えることで、お客様の心に響きます。
このように、技術そのものを語るのではなく、その技術がもたらす「お客様の理想の未来」を語ることが、価値を伝えるための第一歩です。
よくある情報発信の落とし穴とその原因
では、なぜ多くの建築会社はこの視点の転換ができず、情報発信が単なる技術のカタログで終わってしまうのでしょうか?
稲葉氏によると、その最大の原因は「自分たちが伝えたいこと」と「お客様が本当に知りたいこと」の間に深い溝があることに気づいていないからです。
例えば、社長が自慢したい最新の技術や工法の説明ばかりで、お客様の不安や悩みを解決する情報がホームページや資料に書かれていなければ、情報発信は残念ながら技術カタログで終わってしまいます。
さらに、ホームページやSNSは顧客向けなのか、それとも同業者向けなのかの認識が曖昧なケースも多く、結果としてお客様の心に響かない発信になってしまいます。
技術を最強の集客資産にするための3つの戦略ステップ
では、技術を価値に転換する思考法を具体的な行動に移すにはどうすれば良いのでしょうか?
稲葉氏が提唱するのは、以下の3つの基本的な戦略ステップです。
ステップ1:技術を顧客の悩み解決ストーリーに翻訳する
まずは自社のこだわりの技術を、「誰のどんな悩みを解決するのか?」という具体的なストーリーに落とし込みます。技術スペックと顧客の悩みを結びつける作業です。
例えば、新築注文住宅における「高気密・高断熱」の技術は、花粉症で悩むお子様が家の中で安心して深呼吸できる生活を実現するストーリーに翻訳できるかもしれません。
技術はあくまでもお客様の理想の未来を実現する手段であることを忘れず、顧客視点の物語をつくることが大切です。
ステップ2:施工事例で技術のプロセスと未来を見せる
多くの会社が完成写真だけを見せていますが、お客様が本当に知りたいのは「信頼の証」となる施工プロセスです。解体後の現場の姿、そこで発見した課題、プロとしての解決策の提示、職人の丁寧な手仕事の様子などを隠さず見せることが信頼獲得に繋がります。
稲葉氏が運営する「増築改築ドットコム」ではこのプロセスを徹底的に公開し、お客様に技術力や施工の丁寧さを深く理解してもらうことで、揺るぎない信頼を築いています。
ステップ3:技術的強みを軸に競合他社と圧倒的な差別化を図る
例えば、ある会社が古い木造住宅の耐震と断熱に圧倒的な自信を持ち、大手が苦手とする手間のかかる工事に強みを持つなら、その分野でナンバーワンのポジションを築きます。
こうしたニッチな戦場を見つけ出し、一貫して情報発信し続けることで価格競争から脱却し、指名してくれるお客様だけが集まる独自の市場を作り上げられます。
つまり、思考法を変えて、こだわりの技術を悩み解決のストーリーに翻訳し、施工プロセスを公開し、技術塾で差別化を図る。この3つのステップが技術を最強の集客資産に変える基本的な戦略です。
最後の鍵は「信頼」と「ファンづくり」
稲葉氏は最後にこう語ります。「どんなに素晴らしい戦略を実践してお客様の心を掴んでも、最終的に最も大切なのは『信頼』です。そして、その先にあるのが『ファンづくり』」だと。
次回の後編では、顧客を熱狂的なファンに変える最終戦略について詳しく解説される予定です。信頼構築の具体的な方法やファン化の秘訣は、顧客との長期的な関係を築く上で欠かせないテーマですので、ぜひ注目したいところです。
よくある質問(FAQ)
Q1: 技術力は高いのに、なぜお客様に選ばれないのでしょうか?
A1: 技術力だけでは差別化が難しく、顧客ニーズや悩みに寄り添った価値を伝えられていないことが多いです。情報発信を「技術のスペック」から「お客様の未来の価値」へと転換することが重要です。
Q2: どのように技術を顧客の悩み解決ストーリーに翻訳すれば良いですか?
A2: 自社の技術が具体的に誰のどんな問題を解決するかを考え、それをお客様の生活や未来の理想像に結びつけて物語化します。例として、高気密高断熱技術なら花粉症の子どもが安心して過ごせる家づくりのストーリーなどです。
Q3: 施工事例で見せるべきポイントは何ですか?
A3: 完成写真だけでなく、解体後の現場の様子や発見した課題、職人の丁寧な手仕事、問題解決のプロセスを隠さず見せることで、お客様の信頼を獲得できます。
Q4: 差別化のためにどんな戦略が有効ですか?
A4: 自社の技術的強みを軸に、大手が苦手とするニッチな分野や仕様でナンバーワンのポジションを築き、そこで一貫して情報発信を続けることが有効です。
Q5: 最終的に何が成功の鍵になりますか?
A5: 信頼の構築と顧客を熱狂的なファンに変えることが成功の鍵です。信頼を得てファンを作ることで、安定した受注と長期的な関係を築けます。
まとめ
「技術力神話の崩壊」という現実に直面している中小建築社長にとって、技術をただ誇るだけでは選ばれません。最高の武器である技術を、的確に狙いを定める照準器としての集客戦略と結びつけることが不可欠です。
そのためには、技術を顧客の悩み解決ストーリーに翻訳し、施工プロセスを隠さず見せ、技術的強みを軸に他社と圧倒的な差別化を図る3つの戦略ステップを実践しましょう。最終的に信頼を築き、熱狂的なファンをつくることが、長期的な成功への鍵となります。
この思考法と戦略を取り入れ、あなたの会社の技術を「受注に繋がる価値」へと転換し、選ばれる建築会社へと変革を遂げてください。
さらに詳しい内容や次回の「信頼構築術」については、ぜひ動画をご覧ください。